講師紹介
現代社会では、最先端技術化が進み、私たちの生活は日を増して便利になってきました。もちろん、それを否定するつもりもありませんし、寧ろ、もっと便利な世の中になって、豊かな社会が構築されることを私自身も望んでいます。しかしながら、根本的になにか大切な”モノ”、いや、大切にしなければならない”モノ”を忘れて、時代は先へ、先へと進んでいるように思えてなりません。
先人たちは膨大な時間をかけて、文化、価値観、美意識、道徳観を形成し、今の私たちに残してくれました。私の専門は”書”ですが、”書”以前に、この美しい日本文化が好きです。それは、常に他者を意識し、かといって、自己を主張しすぎない繊細で美しい文化。
書に限って言えば、恋い焦がれる人へ宛てて紡がれた美しい文章と文字、一輪挿しを引き立てる茶掛け、美しい紋様の料紙に書かれた和歌。数を挙げればきりがないほど、いちいち美しい。これこそ日本が誇るべき文化であると思います。
私は、そんな文化を一人でも多くの方と共有し、この文化を次世代へ残していきたい、と思っています。
私が書の道を志したのは16歳の頃でした。芸術選択科目で書道を選択していた私ですが、それまでは全くと言っていいほど興味はありませんでした。
ところが、ある書道作品を鑑賞する授業があった際に、頭をトンカチで殴られたような衝撃が走りました。「なんて素晴らしいんだろう。なんて美しいんだろう。」そのとき心から感動した記憶は、今も鮮明に覚えています。それから今の今まで、”書”と共に歩んできました。
”書”は私に「文字の美しさ」以外にたくさんのことを教えてくれました。言葉の魅力、描かない箇所の空間としての美しさ、精神性、古典を通じた古人との時代を隔てた再会。
どんな時代にあっても人々の美意識を満足させてきたものに触れることで、私たちの美意識は磨かれ、同時に日々の生活へ潤いをもたらせてくれます。
教えるなどといったほど、おこがましいことは言えませんが、”書”の魅力をみなさんにお伝えできればと思っております。新たな”墨縁”を楽しみにしております。どうぞ、気兼ねなくコンタクトしてきてください。
みなさまと”書”ができることを楽しみにしております。
白石玄雨|Gen'u Shiraishi
本名 白石一貴|Kazuki Shirasihi
書家/デザイナー。1987年埼玉県羽生市生まれ。
2006年埼玉県立春日部高等学校卒業
2010年新潟大学教育人間科学部芸術環境創造課程書表現コース卒業。
2012年新潟大学大学院教育学研究科教科教育専攻美術教育専修修了。
高校現場で教鞭をとった後、独立。現在、羽生教室に加え、東京都の神楽坂で書道教室を主宰。書道教室運営の傍ら、作品制作を中心に活動を展開しながら、企業のウェブ、パッケージ、ロゴなどのデザインも手掛ける。
著書「なぞり書きで楽しむ夏目漱石」(エイ出版)